怪事件・ミステリー公開日: 2026-06-27更新日: 2026-06-27

【怪事件・ミステリー】ゾディアック事件|暗号を送りつけた連続殺人犯。51年後に解けた暗号でも、正体は分からなかった

1960年代末、カリフォルニアで若いカップルが次々と襲われた。犯人は自ら「ゾディアック」と名乗り、警察と新聞社に暗号文を送りつけた。4つの暗号のうち1つは2020年にようやく解かれたが、そこに名前はなく、犯人の正体は今も分からない。

1968〜1969年アメリカ・カリフォルニア州(サンフランシスコ・ベイエリア)信憑性 B
暗号怪死・不審死アメリカ未解明
霧の夜と暗号記号をモチーフにしたイメージ

1960年代末、アメリカ・カリフォルニア州で、若いカップルが次々と襲われた。犯人は自ら「ゾディアック」と名乗り、警察や新聞社に挑発的な手紙と、解読困難な暗号文を送りつけた。「これを解けば私の正体が分かる」と。だが、4つの暗号のうち最も有名な340字の暗号が51年ぶりに解かれた2020年になっても、そこに犯人の名前はなかった。世界で最も有名な暗号を残した連続殺人犯の正体は、半世紀以上たった今も分かっていない。

ゾディアック事件とは

ゾディアック事件とは、1968年から1969年にかけて、アメリカ・カリフォルニア州のサンフランシスコ・ベイエリアで起きた連続殺人事件である。犯人は警察や新聞社に「ゾディアック」と名乗る手紙を送りつけたことから、この通称で呼ばれる。アメリカ史上最も有名な未解決事件のひとつだ。

公式に確認されているのは5人が殺害され、2人が負傷した事件である。ただし犯人自身は手紙の中で「37人を殺した」と主張していた。最大の特徴は、犯人が自分の犯行を誇示し、暗号文を送りつけ、警察やメディアを翻弄しようとした「劇場型犯罪」だった点にある。この自己顕示こそが、事件を半世紀以上にわたる謎へと変えていった。

サンフランシスコ・ベイエリアの地図とゾディアック事件の襲撃地点

確認されている襲撃

犯人の犯行とされる事件では、いずれも人里離れた場所にいた若いカップルが標的になった。まず被害者の名前を記す。

1968年12月、レイク・ハーマン・ロードで、17歳のデービッド・ファラデーと16歳のベティ・ルー・ジェンセンが車中で襲われた。1969年7月、バレーホのブルー・ロック・スプリングスで、ダーリーン・フェリンとマイケル・マジョーが銃撃され、マジョーは生き延びた。1969年9月、ベリーエッサ湖畔で、頭巾をかぶった犯人がピクニック中のブライアン・ハートネルとセシリア・シェパードをナイフで襲い、ハートネルは生還した。そして1969年10月、サンフランシスコ市内で、29歳のタクシー運転手ポール・スタインが殺害された。生き延びた被害者たちは、犯人について貴重な証言を残した。事件を語るとき、まず記憶されるべきは、若い命が奪われ、生存者がその後も長く傷を抱えたという事実である。

事件の時系列

事件は短い期間に集中して起き、その後は手紙だけが長く続いた。

1968年12月の最初の襲撃に始まり、1969年7月、9月、10月と犯行が続いた。10月のタクシー運転手殺害では、犯人は目撃され、警察が至近距離まで迫りながら取り逃がしている。直接の襲撃は1969年内でほぼ途絶えるが、犯人はその後も数年にわたって新聞社へ手紙や暗号文を送り続けた。1974年頃を最後に手紙も途絶える。そして2020年、最後まで未解読だった340字の暗号が、ようやく解読される。襲撃から半世紀を経てなお、事件は「現在進行形の捜査」として残り続けている。

ゾディアック事件の時系列

犯人からの手紙と「ゾディアック」の名乗り

ゾディアック事件を特異なものにしているのは、犯人が積極的に「語った」ことである。犯人は新聞社に手紙を送り、自分が犯人であることを証明するため、事件の詳細や被害者の衣服の一部を同封した。そして自らを「ゾディアック」と名乗り、円に十字を重ねた独自の記号を署名として使った。

犯人は、自分の犯行が大きく報じられることを望んでいた。手紙を一面に載せなければ殺人を続ける、と新聞社を脅すこともあった。この行動によって、ゾディアックは単なる殺人犯ではなく、社会を恐怖させ、警察とメディアを意のままに操ろうとする「神話的な存在」として語られるようになった。だが、その自己顕示は同時に、犯人が大量の物証(手紙・筆跡・暗号)を自ら残したことを意味する。それでも正体にたどり着けなかったところに、この事件の異様さがある。

4つの暗号文

犯人は「これを解けば私の正体が分かる」と豪語し、4つの暗号文を送りつけた。これが事件最大の謎であり、最大の特徴である。

最初の408字の暗号(Z408)は、1969年に一般市民である高校教師の夫妻によって解読された。そこには「人を殺すのはとても楽しい」「死後の世界で自分に仕える奴隷を集めている」という常軌を逸した動機が記されていたが、犯人の名前は含まれていなかった。最も有名な340字の暗号(Z340)は、51年間も解読されず「暗号界の聖杯」と呼ばれたが、2020年、アメリカ・オーストラリア・ベルギーの民間チームによってついに解読され、その正当性をFBIも認めた。しかし内容はやはり警察への挑発で、名前はなかった。さらに、1970年4月に送られた「私の名前は……」で始まる13字の暗号と、32字の暗号は、現在も解読されていない。犯人は正体を匂わせ続けたが、解けた暗号は一つも、その約束を果たさなかった。

ゾディアック事件の4つの暗号文とその解読状況

犯人をめぐる容疑者説

警察は数千人規模の容疑者を調べたが、決定的な証拠は見つからなかった。代表的な説を挙げるが、いずれも確証を欠く。

最も有力視されたのはアーサー・リー・アレンである。犯人が手紙で言及した「ゾディアック」というブランドの腕時計を愛用し、言動にも不審な点があった。だが、DNA鑑定・筆跡鑑定・指紋のいずれも一致せず、彼は1992年に病死した。ほかにも、書籍で実父を犯人と主張したアール・ヴァン・ベスト・ジュニア説や、2021年に民間捜査団体が名指ししたゲイリー・フランシス・ポステ説などがあるが、いずれも公式には確認されていない。さらに、生存者の証言で犯人の声や体格が事件ごとに食い違い、手口(銃撃と刺殺)も一貫しないことから、犯人は2人いたのではないかとする説も、捜査段階から有力な仮説として存在した。説は多いが、真相を確定できるものはない。

主な容疑者と、なぜ未解決か

なぜ未解決のままなのか

これほど犯人が自ら情報を残しながら、なぜ捕まらなかったのか。理由はいくつも重なっている。

第一に、物証の限界。犯行現場から得られた決定的な物証は乏しく、DNAや指紋で犯人を特定するには至らなかった。第二に、捜査体制の問題。事件は複数の警察管轄にまたがって起き、当時は管轄間の情報共有が不十分だった。第三に、時代の技術的制約。現代のDNA捜査が確立する前の事件であり、保存された証拠から得られる情報にも限りがある。そして第四に、暗号が正体を明かさなかったこと。最大の手がかりであるはずの暗号は、解読されても犯人の名前を含んでいなかった。これらが重なり、半世紀を超えて真相は霧の中にある。

暗号は正体を明かすのか

2020年にZ340が解読されたとき、多くの人が「ついに正体が分かるのでは」と期待した。だが、解読チーム自身が述べたように、その内容は捜査の役に立つものではなく、人々を怖がらせるための犯人の挑発に過ぎなかった。

ここに、この事件の本質がある。犯人は「暗号を解けば正体が分かる」と思わせ続けたが、解けた暗号に名前はなく、名前を匂わせた暗号は今も解けていない。暗号は、正体へ導く鍵のように見えて、実際には犯人が張り続けた「謎の演出」だった可能性が高い。私たちは、解読という達成に正体の解明を重ねてしまいがちだが、Z340の解読が教えたのは、「暗号が解けること」と「事件が解けること」は別だ、という冷たい事実だった。

事件の正体とは|信憑性Bの理由

ゾディアック事件の「正体」を考えるうえで大切なのは、これが超常現象ではなく、人間による連続殺人だという点である。何が起きたか――若いカップルが一人の人物(あるいは複数)に襲われた――は分かっている。未解明なのは、その犯人が誰か、という一点である。

本サイトが信憑性をBとしているのは、この構図による。出来事そのものは通常の犯罪として説明でき、超常的な要素を必要としない。その意味で「通常の説明への耐性」は高くない。しかし、犯人の身元という核心は、大量の手紙・筆跡・暗号という手がかりがありながら確定せず、最有力のアレンも物証が一致しなかった。怪現象としての堅牢さは低いが、未解決犯罪としての未解明性は堅い――だからSでもAでもなく、B(不可解だが解釈が割れ、決定打を欠く)に位置づけている。切り裂きジャック事件と同じ、「謎が深い」というより「答えにたどり着く手段が犯人の身元に届かなかった」種類の未解決である。

まとめ

ゾディアック事件は、1968年から1969年にかけて米カリフォルニアで起きた連続殺人事件である。犯人は自ら「ゾディアック」と名乗り、警察や新聞社に手紙と4つの暗号文を送りつけた。公式には5人が殺害され2人が負傷したが、犯人は「37人を殺した」と主張した。

最大の特徴である暗号は、最初のZ408が事件当時に、最後まで残ったZ340が2020年に解読された。しかし、解けた暗号に犯人の名前はなく、名前を匂わせた暗号は今も未解読のままだ。最有力容疑者アーサー・リー・アレンも物証が一致せず、近年の容疑者説も確認されていない。犯人がこれほど多くを語り残しながら正体に届かないという逆説こそ、この事件が半世紀を超えて語り継がれる理由である。そして忘れてはならないのは、その謎の中心に、理不尽に奪われた若い命があったという事実である。

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よくある質問

Q. ゾディアック事件とは何ですか? A. 1968〜1969年に米カリフォルニア州のサンフランシスコ・ベイエリアで起きた連続殺人事件です。犯人が自らを「ゾディアック」と名乗り、警察や新聞社に暗号文や挑発的な手紙を送りつけたことで知られる、アメリカ有数の未解決事件です。

Q. 被害者は何人ですか? A. 公式に確認されているのは、5人が殺害され、2人が負傷した事件です。ただし犯人自身は手紙の中で「37人を殺した」と主張していました。確認されている襲撃の標的は、いずれも若いカップルでした。

Q. 暗号は解読されたのですか? A. 一部は解読されました。最初の408字の暗号は1969年に高校教師の夫妻が解読し、最後まで残った340字の暗号(Z340)は2020年に民間チームが解読し、FBIもこれを認めました。しかし、どちらにも犯人の名前は記されていませんでした。

Q. 犯人は誰だったのですか? A. 特定されていません。最も有力視されたアーサー・リー・アレンは、DNA・筆跡・指紋のいずれも一致せず、1992年に病死しました。ほかの容疑者説や、2021年の民間団体による名指しも、公式には確認されていません。

Q. 犯人が2人いたという説は本当ですか? A. 可能性のひとつとして、捜査段階から存在した仮説です。生存者の証言で犯人の声や体格が事件ごとに食い違い、銃撃と刺殺という手口の違いもあったことが根拠とされます。ただし確定はしていません。

Q. なぜ今も未解決なのですか? A. 決定的な物証が乏しく、事件が複数の警察管轄にまたがって情報共有が不十分だったこと、現代のDNA捜査以前の事件であること、そして最大の手がかりである暗号が解読されても犯人の名前を含んでいなかったことが重なっているためです。